心拍ゾーン計算の仕組み
計算は2段階です。まず最大心拍数を決め、そこから5つの範囲を出します。
最大心拍数 = 208 − 0.7 × 年齢
田中らが351件の研究をまとめて2001年に発表した式です。昔からある「220 − 年齢」は高齢者で最大心拍数を低く、若い人で高く見積もる傾向があり、田中の式はその偏りを小さくしています。テストやレースのラストで最大心拍数を測ったことがあれば、計算式の代わりにその値を使います。
ゾーンの心拍数 = 最大心拍数 × 割合
ゾーンの心拍数 = 安静時心拍数 + (最大心拍数 − 安静時心拍数) × 割合
カルボーネン法では、割合を最大心拍数ではなく予備心拍数(最大心拍数と安静時心拍数の差)に掛けます。これで体力の差が反映され、安静時50 bpmのランナーは同じ年齢で安静時75 bpmの人よりゾーンが高くなります。ゾーンの区切りはどちらの方法でも50、60、70、80、90、100%です。
例:30歳、安静時心拍数60。計算式による最大心拍数は187 bpm、予備心拍数は127です。最大心拍数の割合で出したゾーン2は112〜131 bpm、カルボーネン法では136〜149 bpmになります。下限が24拍ずれるのは、予備心拍数の60%と最大心拍数の60%がそもそも別の強度だからです。安静時心拍数が低いランナーには、カルボーネン法のほうが体感に合うことが多いです。
ランニングの5つの心拍ゾーン
割合は、選んだ方法に応じて最大心拍数または予備心拍数に対するものです。ゾーンの呼び名は時計やアプリで異なりますが、並びは同じで、ゾーンが高いほど続けられる時間は短くなります。
ゾーン1・回復 · 50–60 %
きつい練習からの回復を助ける強度です。ウォームアップ、クールダウン、きつい練習の翌日のジョグがここに入ります。走り始めたばかりの人は、上り坂の早歩きでもこのゾーンになることがよくあります。
ゾーン2・有酸素ベース · 60–70 %
市民ランナーでもトップ選手でも、走行距離の大半はこのゾーンです。血中乳酸がほとんど上がらないので1時間以上走り続けられ、その間に心臓と筋肉が長時間の運動に慣れていきます。
ゾーン3・中強度 · 70–80 %
回復には強すぎ、閾値を鍛えるには弱すぎる強度です。ほとんどの練習がここに流れると、体力より疲労のほうが先にたまります。それでも役割はあり、多くの市民ランナーのマラソンペースはこのゾーンかゾーン4との境目にあります。
ゾーン4・閾値 · 80–90 %
20〜40分のテンポ走や、短い休息を挟んだ5〜10分の反復です。話せるのは単語程度。速いペースを長く保つ力がつき、10kmやハーフマラソンの練習の柱になります。
ゾーン5・VO₂max · 90–100 %
2〜5分のインターバルやレース終盤です。心拍数は負荷から1〜2分遅れて上がるので、短い反復ではペースや体感を目安にしてください。
年齢別の心拍ゾーン早見表
田中の式による最大心拍数と、それに対する割合で出した5つのゾーンです。安静時心拍数がわからない場合はこの表を、わかる場合は上の計算ツールでカルボーネン法を使うとより近い値になります。
| 年齢 | 最大心拍数 | ゾーン1 | ゾーン2 | ゾーン3 | ゾーン4 | ゾーン5 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 20 | 194 | 97–116 | 116–136 | 136–155 | 155–175 | 175–194 |
| 25 | 191 | 96–115 | 115–134 | 134–153 | 153–172 | 172–191 |
| 30 | 187 | 94–112 | 112–131 | 131–150 | 150–168 | 168–187 |
| 35 | 184 | 92–110 | 110–129 | 129–147 | 147–166 | 166–184 |
| 40 | 180 | 90–108 | 108–126 | 126–144 | 144–162 | 162–180 |
| 45 | 177 | 89–106 | 106–124 | 124–142 | 142–159 | 159–177 |
| 50 | 173 | 87–104 | 104–121 | 121–138 | 138–156 | 156–173 |
| 55 | 170 | 85–102 | 102–119 | 119–136 | 136–153 | 153–170 |
| 60 | 166 | 83–100 | 100–116 | 116–133 | 133–149 | 149–166 |
| 65 | 163 | 82–98 | 98–114 | 114–130 | 130–147 | 147–163 |
| 70 | 159 | 80–95 | 95–111 | 111–127 | 127–143 | 143–159 |
単位はすべてbpm(拍/分)。隣り合うゾーンは境界の値を共有します。スポーツウォッチと同じ数え方です。
ゾーン2の心拍数とは?見つけ方
ゾーン2は、走っていても楽に感じる心拍数です。呼吸は安定し、息を切らさずに文章で話せます。生理学では第1閾値、つまり血中乳酸がほとんど上がらない強度の上限と結びつけられています。心拍ゾーンはこの閾値に近づける目安であり、閾値そのものを測っているわけではありません。
計算が合っているかは次のランで確かめられます。ゾーン2の上限まで心拍数を上げ、長めの文を声に出してみてください。楽に言えればゾーンは合っています。息が続かず文が途切れるなら閾値はもっと低いので、ジョグは計算値より5〜10拍低く抑えます。逆に上限でも散歩のように楽なら、実際の最大心拍数が計算式より高い可能性があり、一度測ってみる価値があります。
多くのトレーニングプランでは、週の走行時間のおよそ8割を低強度、つまりゾーン1と2に充てています。
ゾーン2ランニングをくわしく:会話テスト、心拍ドリフト、80/20の根拠 →
計算式の限界
田中の式は同年代の平均をよく表しますが、個人では上下に10拍前後ずれることがあります。同じ30歳で推定値が187でも、実際の最大心拍数が177の人も197の人もいて、その場合ゾーンはほぼ丸ごと1つずれます。実測のほうが正確です。研究施設での段階的負荷テストのほか、胸ストラップを着けて5kmレースを走り、最後の400mを全力で上げる方法もあります。
心拍数は負荷から1〜2分遅れて反応し、暑さや脱水、ロング走の後半には同じペースでも上がっていきます。短いインターバルではペースを基準にし、ゆっくりのロング走で加速していないのにゾーン3に入っても慌てないでください。
手首の光学式センサーは胸ストラップより誤差が出やすく、特にインターバルや寒い日に外れがちです。
β遮断薬など心拍数を下げる薬を飲んでいる場合、計算式によるゾーンは当てはまりません。心臓病、高血圧、妊娠中の場合は、ゾーンの設定や最大強度のテストについて医師に相談してください。
よくある質問
ランニングの心拍数ゾーンはどう計算しますか?
最大心拍数(実測値、または田中の式 208 − 0.7 × 年齢)に0.5、0.6、0.7、0.8、0.9を掛けると、5つのゾーンの境目が出ます。安静時心拍数がわかるならカルボーネン法のほうが正確で、同じ割合を予備心拍数(最大 − 安静時)に掛けてから安静時心拍数を足します。30歳・安静時60 bpmなら、カルボーネン法のゾーン2は136〜149 bpmです。
カルボーネン法とは何ですか?
予備心拍数からゾーンを決める方法で、ゾーンの心拍数 = 安静時 + (最大 − 安静時) × 割合 で求めます。フィンランドの生理学者マルッティ・カルボーネンが1957年に提案しました。安静時心拍数には体力が表れるため、よく走っている人は同じ年齢の初心者よりゾーンが高くなります。
ゾーン2の心拍数はいくつですか?
最大心拍数に対する割合なら60〜70%で、田中の式を使うと30歳で112〜131 bpmです。カルボーネン法で安静時60 bpmなら136〜149 bpmになります。どちらが合うかはトークテストで判断でき、ゾーン2の上限でも文章で話せることが目安です。
最大心拍数の計算式はどのくらい正確ですか?
田中の式は同年代の平均を示すもので、個人ではそこから上下10拍前後ずれることがあります。計算式のゾーンが体感と合わないときは、テストで最大心拍数を測ってこの計算ツールに入力してください。実測値が計算式に置き換わります。
ジョグなのに心拍数がゾーン2を超えるのはなぜですか?
よくある原因は暑さ、睡眠不足、カフェイン、体調不良、そしてロング走の後半に心拍数がじわじわ上がる現象です。計算式が最大心拍数を低く見積もっている可能性もあります。その心拍数でも文章で話せるなら走りは楽な強度なので、実測の最大心拍数でゾーンを計算し直してください。走り始めの数週間は、ゾーン2に収めるために歩きを挟むのも普通のことです。