傾斜の代価はどう計算されるか
2つのモデルは同じ問いに答えています。同じ速度なら、傾いたベルトの1kmは平らなベルトの1kmの何倍かかるのか。ベルト速度にその係数を掛ければ、同じ消費になる平地の速度が出ます。
平地の速度 = ベルト速度 × (1 + 4.5 × 傾斜) — ACSM、ランニング
これはACSMのランニング代謝式 VO₂ = 0.2·S + 0.9·S·G + 3.5 から導かれます。Sは毎分メートルの速度、Gは小数で表した傾斜です。0.9 / 0.2 が 4.5 になります。ウォーキングには別の式 VO₂ = 0.1·S + 1.8·S·G + 3.5 があり、係数は18になります。上り坂の歩きが約4倍厳しく評価されるのは、歩き自体がきついからではなく、平地の歩きが安上がりな一方で、自分の体重を同じ高さまで持ち上げる代価は誰にとっても同じだからです。
平地の速度 = ベルト速度 × C(傾斜) / C(0)
Cは移動のエネルギーコストで、単位は体重1kgあたり・1mあたりのジュール。Minettiら(2002)が −45 %から +45 %までの傾斜での実測にあてはめたものです。ランニングは C(0) = 3.6 J/kg/m、ウォーキングは 2.5。ACSMの直線と違いこの曲線は曲がり、下りについて何かを語れるのは2つのうちこちらだけです。
計算例
ベルト 10 km/h、傾斜 5 %。コンソールの表示は 6:00 分/km。ACSMは消費を 1.23 倍、Minettiは 1.30 倍とするので、平地で同じきつさなら ACSMで 4:54 分/km、Minettiで 4:37 分/km、すなわち 12.3〜13.0 km/h に相当します。向きに注意してください。傾斜はコンソール上のあなたを遅くし、換算上のあなたを速くします。
なぜ一つの数字ではなく範囲なのか
1〜2 %なら2つのモデルの差は数パーセント以内で、どちらを選んでも変わりません。10 %では一方が1kmあたり45 %高くつくと言い、もう一方は66 %と言います。差は21ポイントです。15 %ではACSMがベルト速度の1.68倍、Minettiが2.06倍とします。どちらかが誤っているのではありません。ACSMはトレッドミル上の中程度の定常運動にあてはめた直線、Minettiははるかに広い傾斜範囲にあてはめた曲線です。平均を取れば見た目は整いますが、誰も測っていない三つ目の数字を作ることになります。だからこのページは両方を出し、差はそのまま残します。
傾斜コスト表
同じ速度の平地と比べて、その傾斜で1kmが何倍高くつくか。ベルト速度に表の数値を掛ければ、平地換算の速度になります。中身は比なので、キロでもマイルでも同じように読めます。
| 傾斜 | 走、ACSM | 走、Minetti | 歩、ACSM | 歩、Minetti |
|---|---|---|---|---|
| 0 % | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 |
| 1 % | 1.05 | 1.06 | 1.18 | 1.08 |
| 2 % | 1.09 | 1.11 | 1.36 | 1.16 |
| 3 % | 1.14 | 1.17 | 1.54 | 1.25 |
| 4 % | 1.18 | 1.24 | 1.72 | 1.34 |
| 5 % | 1.23 | 1.30 | 1.90 | 1.44 |
| 6 % | 1.27 | 1.37 | 2.08 | 1.54 |
| 8 % | 1.36 | 1.51 | 2.44 | 1.74 |
| 10 % | 1.45 | 1.66 | 2.80 | 1.96 |
| 12 % | 1.54 | 1.81 | 3.16 | 2.18 |
| 15 % | 1.68 | 2.06 | 3.70 | 2.54 |
ウォーキングの2列はランニングより早く、大きく食い違います。5 %でACSMは1.90、Minettiは1.44。おおよそ 6.4 km/hより速い歩きの数値は疑ってかかってください。ACSMの歩行式はその速度より下であてはめられており、それを超えると人は歩くのをやめて走り出します。
下り:ゼロより下のベルト
下向きに傾くトレッドミルは一部だけで、たいてい −3 %止まりですが、下りを含むコースなら同じ問題が起きます。ここでACSMの式に言えることはありません。直線なので下りをいくらでも安くし続け、しまいには負の消費を返します。Minettiは曲線の本当の形を測りました。
| 傾斜 | 走、Minetti | 歩、Minetti |
|---|---|---|
| -1 % | 0.95 | 0.92 |
| -2 % | 0.90 | 0.85 |
| -3 % | 0.85 | 0.78 |
| -5 % | 0.76 | 0.66 |
| -8 % | 0.65 | 0.52 |
| -10 % | 0.60 | 0.45 |
| -15 % | 0.51 | 0.37 |
| -20 % | 0.50 | 0.43 |
| -25 % | 0.56 | 0.62 |
| -30 % | 0.68 | 0.88 |
コストはランニングで約 −18.1 %、ウォーキングで約 −15.3 %まで下がり、そこでの1kmは平地のおよそ 49 %と 37 %です。それより急になると再び上がります。ブレーキも仕事であり、十分に急な下りでは下りが節約する分より高くつくからです。これはカロリーのページが歩行速度について見つけたのと同じU字で、起伏のあるコースが「平坦なコース+ペナルティ」では決してない理由でもあります。
1 %ルールと、それが実際にあてはまる範囲
同じ速度なら、ベルトの上を走るほうが屋外より少しだけ安上がりです。押しのける空気がないからです。JonesとDoust(1996)はその差を測り、傾斜1 %でトレッドミルの消費が路上と釣り合うことを示しました。「常に1 %にせよ」という助言の出どころはここです。
たいてい落とされるのは、そこに付いていた条件のほうです。この結果が成り立つのはおよそ 10.5〜18 km/hの速度です。空気抵抗は速度の2乗で増えるので、この範囲より遅ければ埋め合わせるものがほとんどなく、1 %は路上より練習をきつくするだけです。しかも被験者9名の小さな研究でした。1 %はテンポ走の妥当な既定値であって、物理法則ではありません。
この計算でわからないこと
エネルギーはきつさのすべてではありません。ベルトは地面を自分から後ろへ運び、蹴り出しを同じようには求めません。手すりを持てば体重の一部が抜けます。ジムの空気は動かず暖かい。急な上り坂はふくらはぎとアキレス腱に、平地とは違う負荷をかけます。ここでの等価はあくまで代謝的なもの——1kmあたり同じジュール——それだけです。トレッドミルの数字が路上の数字よりきつく感じるとしても、それは必ずしも計算間違いではありません。
使い方
種目を選び、ベルト速度をコンソールの表示に合わせ、傾斜を決めて、平地のペースを読みます。逆向きの問題——目標の路上ペースをベルトの設定に直す——も同じウィジェットで解けます。傾斜を好きな値に固定し、換算ペースが目標と一致するまで速度を動かすだけです。地形が一定勾配ではなく本物の起伏なら、地図のプランナーが区間ごとに獲得標高と下降を合計します。
よくある質問
トレッドミルの傾斜いくつが屋外ランと同じですか。
約1 %、しかもおおよそ 10.5〜18 km/hのときだけです。この補正が埋め合わせるのは空気抵抗で、ジョグの速度ではほとんど存在しません。その範囲より遅ければ、平らな路面に近いのはむしろ0 %です。
トレッドミルは屋外より楽ですか。
同じ速度なら少しだけ楽です。空気抵抗も風もなく、路面も変わりません。差はテンポ走の速度で傾斜1 %分ほど。それ以外——暑さ、退屈さ、曲がりや路面の傾きがないこと——は代謝の話ではなく、この数字には表れません。
傾斜で消費カロリーはどれだけ増えますか。
表のコスト係数と同じ比率で増えます。5 %ならランニング1kmの消費は平地の1.23〜1.30倍、つまりカロリーは23〜30 %増です。距離は同じでも仕事量が違います。カロリー計算機は体重と獲得標高からその数値を直接出します。
トレッドミルの計算機ごとに答えが違うのはなぜですか。
使っているモデルが違い、しかもどれを使ったかをほとんど書かないからです。多くはACSMの式、一部はMinettiの多項式、中には出典のない目安だけのものもあります。緩い傾斜なら答えは数パーセント以内に収まりますが、急な傾斜ではそうなりません。
トレッドミルの下りは計算できますか。
Minettiの曲線でなら可能で、それが上の下り表です。ACSMの式ではできません。平地と上りのデータだけであてはめられており、ゼロより下へ延ばすと物理的な意味を超えて下がり続ける数字になります。
練習ではどのくらいの傾斜がよいですか。
通常のランニングなら1〜2 %。路上に近い消費を保ちつつ、走り方も変わりません。おおよそ6 %を超えると、それはもう別の練習——ランニングというより坂インターバルに近いもの——なので、なんとなく入れっぱなしにせず、意図して組むべきです。