トレッドミルと外ランの違い:何が違い、どちらを選ぶか
トレッドミルと外ランの違いは、思われているほど大きくありません。ベルトの上では押しのける空気がないので、同じ速度なら消費エネルギーはわずかに少なく、小さな傾斜でその差は埋まります。33件の研究ではフォームもほぼ同じで、違いはトレッドミルのほうが足裏をフラットに着地する点でした。いちばん差が出るのは体感です。速いペースではトレッドミルのほうが心拍もきつさも高く、遅いペースでは低くなります。
トレッドミルに少し傾斜をつけるというアドバイスは、1996年の実験から来ています。鍛えた男性ランナー9人が、6種類の速度で6分ずつ走りました。傾斜0〜3%のトレッドミルで5回、平らな道路で1回です。各回の最後の2分間に呼気を集め、酸素摂取量を測りました。その後、生理学とフォームについて大きなレビューが2本出ています。わかったことと、わからないことをまとめます。
トレッドミルと外ランの違い:消費エネルギー
外では、エネルギーの一部が空気を押しのけるのに使われます。ベルトの上では室内の空気に対して体が進まないので、その分の消費がなくなります。Pugh(1970年)はトレッドミル上で向かい風を当て、ランナーの酸素消費を測りました。増える分は風速の2乗に比例していました。彼の見積もりでは、時速21.5km(1kmあたり2分47秒、5000mレースのペース)で空気抵抗は総消費の約8%、100mを10秒で走る場合は約16%です。
練習のペースではこの割合はずっと小さくなります。抵抗は速度が下がると減り、ゆっくりしたジョグではほとんど残りません。
外と同じにするには傾斜を何%にするか
JonesとDoustのこの実験から生まれたのが傾斜1%のルールです。時速10.5〜18kmでは、この傾斜でトレッドミルの酸素消費が道路と同じになりました。速度ごとに見ると結果は少しずつ違います。
| 速度 | 道路と一致した傾斜 |
|---|---|
| 時速10.5km5分43秒/km | 0%と1% |
| 時速12km5分00秒/km | 0%と1% |
| 時速13.5km4分27秒/km | 1%のみ |
| 時速15km4分00秒/km | 1%と2% |
| 時速16.5km3分38秒/km | 1%と2% |
| 時速18km3分20秒/km | 道路は1%と2%の間、どの傾斜とも有意差なし |
時速12kmまでは平らなベルトでも道路と差がなかったので、ゆっくりしたジョグなら傾斜は0%のままで構いません。テンポ走では傾斜をつけると外の負荷に近づきます。上のリンクの計算機は、どんな速度と傾斜でも平地で同じ負荷になるペースに換算します。
フォームはほぼ同じ、違うのは着地
Van Hoorenら(2020年)は、同じ人がトレッドミルと地面の両方で走った33件の研究(合計494人)をまとめました。ほとんどの指標に差はありませんでした。トレッドミルでは足裏がよりフラットに着地し(着地時の足と地面の角度が平均9.8°小さい)、重心の上下動が小さく(1.5cm)、接地時間がわずかに長く(5ミリ秒)なっていました。
著者はこの根拠の質を「低い」と評価しています。ランナーにとっての結論はシンプルで、トレッドミルで定期的に走ってもフォームは崩れません。ただし平らなベルトには、カーブも路面の凹凸も下り坂もありません。
心拍ときつさは速度しだい
Millerら(2019年)は、酸素摂取量・乳酸・心拍・主観的なきつさを比べた34件の研究をまとめました。中くらいの速度では、傾斜0%でも1%でも酸素摂取量は地面と同じで、乳酸はトレッドミルのほうが低めでした。心拍ときつさはもう少し複雑で、速い速度ではトレッドミルのほうが高く、遅い速度では低くなりました。
つまり、同じ心拍で走れるペースはトレッドミルと外で一致しないことがあります。ゾーン2のゆっくり走をするなら、外のペースではなく心拍を目安にしてください。同じレビューにはもう一つ結果があり、持久力テストの成績は電動トレッドミルのほうが地面より平均して悪くなっていました。
ジムの暑さと表示の数字
室内には外のように体を冷やす向かい風がないので、トレッドミルの前に扇風機があると楽になります。表示の速度はマシン自体が計算した値で、ジムが点検しているとは限りません。自分で確かめることもできます。ベルト1周の長さを測り、テープを1枚貼って、横に立って1分間の回転数を数えます。時速(km)=ベルトの長さ(m)×毎分の回転数×0.06です。長さ3mのベルトが1分に60回転なら時速10.8kmです。
GPSが使えないので、時計は腕の振りやシューズのセンサーから距離を推定します。そのため時計のペースと表示が合わないことがあります。合わないときは、回転数で確かめたベルトのほうを信じましょう。
この研究でわからないこと
傾斜のルールは、鍛えた男性9人と約5分の走りから得られたものです。初心者、女性、1時間の走りは調べていません。フォームのレビューは質の低い根拠にもとづいており、生理学のレビューは「差は測定した速度によって変わる」とはっきり書いています。
ランニングマシンと外、どっちで走るか
- ロードレースに向けて練習しているなら、ロング走と目標ペース走は外で。本番と同じ空気、カーブ、路面で走れます。目標タイムと距離からのペースはペース計算機で出せます。
- 路面の凍結、暗さ、暑さがあるなら、速い区間でベルトの傾斜を上の表のように上げれば、トレッドミルで外の代わりになります。
- 決まった速度でインターバルをするなら、ベルトが速度を保ってくれます。外では時計を見ながらペースを合わせることになります。
- ゆっくりしたジョグなら、消費の差はほぼありません。都合のいいほうを選び、心拍を見ておきましょう。
よくある質問
- トレッドミルは外より楽?
- エネルギーでいえば少し楽です。ベルトの上には空気抵抗がありません。時速10.5〜18kmでは傾斜1%でその差がなくなります(Jones・Doust、1996年)。体感はペースしだいで、速いとトレッドミルのほうが心拍もきつさも高く、遅いと低くなります(Millerら、2019年)。
- トレッドミルの傾斜は何%にすれば外ランと同じ?
- 時速10.5〜18kmなら1%です。時速10.5kmと12kmでは道路と0%のベルトにも差がなかったので、ゆっくりしたジョグなら傾斜なしでも構いません。データは鍛えたランナー9人、約5分の走りから得られたものです。
- トレッドミルは外より消費カロリーが少ない?
- 傾斜なし・同じ速度なら少しだけ少なくなります。空気抵抗がないためです。時速21.5kmで空気抵抗は総消費の約8%(Pugh、1970年)、練習ペースではそれより小さくなります。時速10.5〜18kmで傾斜1%にすれば道路と同じになります。
- 時計のペースとトレッドミルの表示が合わないのはなぜ?
- GPSが使えないため、時計は腕の振りやシューズのセンサーから距離を推定します。表示の速度もジムで点検されていないことが多い値です。ベルトの長さ(m)×毎分の回転数×0.06で、実際の時速(km)を確かめられます。
- レースの練習はランニングマシンと外のどっちがいい?
- どちらでも練習になり、フォームもほぼ同じです。ただ持久力テストの成績はトレッドミルのほうが平均して悪く(Millerら、2019年)、本番は外です。ロング走と目標ペース走は外で、インターバルはトレッドミルでも構いません。